
作者:売野機子
ジャンル:ヒューマンドラマ、宇宙、青春、友情、学生
掲載誌:週刊ビッグコミックスピリッツ
連載期間:2024年 6月~
刊行巻数:4巻(2025/06/30 現在)
あらすじ
小学校六年生の朝日田ありす(あさひだありす)は、容姿端麗、運動神経抜群の人気者。幼少の頃に両親からバイリンガル教育を受けていたが、その両親が亡くなったことにより、両言語共に中途半端な状態、所謂、セミリンガル状態となってしまっていた。
そのことに、本人も周りも気づかず、伝えたいことを伝えられない、知りたいのに理解できない、挙句の果てにその辛いという気持ちも言語化出来ない、と自分自身を見失いかけていた。
そんな、彼女の様子に一人だけ気が付いた少年がいた。
少年はありすがセミリンガルであると気付き、君はバカじゃない、君はなんにでもなれる可能性があると言ってのけます。
人は死んだ後、天国で次に住む星を決めることができるという幼少の頃に両親が話していた言葉を思い出して、少女は誓う、両親が住む星に必ず行ってみせると。
類の言葉を胸に、ここからありすの宇宙飛行士になるという夢が動き始める。
おすすめのポイントを三つ紹介!
- 明日も決められなかった少女が宇宙飛行士になるまでの物語
本作は、一ページ目が、宇宙飛行士となったありすのインタビューシーンから始まります。
この作品に限らず、何か目標がある場合、最終的にそれになれるかどうかまでの過程を描いていく作品が多いと思います。しかし、この作品は冒頭に結果を持ってきていることが非常に珍しいといえると思います。
朝日田ありすという少女が、小学六年生の時代から作品は始まりますが、この時の少女は冒頭で描かれていたようなインタビューにハキハキと受け答えする女性ではなく、明日が来ることを辛いと感じる小さな女の子でした。
では、一体この少女がどのような人生を経験して、宇宙飛行士になるかを描いていくのがこの『ありす、宇宙までも』なのです。 - 『セミリンガル』アリスと『神童』類の常識を打ち破る革命
セミリンガルとは何なのか、それが『宇宙飛行士になる』というありすの目標に対してどのような障害になるのかを前提に、犬星類がそれを克服しつつ、どのようなプロセスでその目標を達成させるかを都度明確に示しています。
つまり読者側に具体性を認知させて没入感をより一層引き立てせている作品になっています。 - 登場人物たちの心理描写が非常に良く描かれている
本作品でとても突出しているなと感じるところが、登場人物たちの心理描写です。
主人公ありすは、セミリンガルであるが故に、他人と上手くコミュケーションが取れず、そのもどかしさや辛さすらも心の内で何と言えば良いのかすらわからない状態でした。わからない、ただ、『つかれた』としか表現できないと描写されており、苦しさも表現できないことへの苦悩がとても伝わってきます。
もちろん、マイナスの表現だけでなく他の感情も優しい絵と共に上手く描写されていますのでチェックしてみてくださいね!
どんな人におすすめ?
- セミリンガルって何?宇宙飛行士って知っているけど具体的に何?と思う方
- 背中を押して欲しい方
- 自分の夢を追いかけたい方
イラスト!!
- 読者まで嬉しくさせてくれる魅力がある

- 最高のコンビ!

キャラクター紹介
- 名前:朝日田ありす(あさひだありす)
- 登場巻:第1巻~
- 立ち位置:本作の主人公
【紹介】
容姿端麗、運動神経抜群、だけれどセミリンガルというハンデを抱えた少女。
小さい頃に両親を亡くしており、現在は祖母と二人暮らしをしている。
他人の言葉にひどく敏感で、その言葉が原因で傷つくこともあるが、その気持ちを心の中でどう表現して良いかわからず、もどかしい日々を過ごしている。
一時期自分が何者であるかすらわからないという程に自分を見失ってしまうが、クラスメイトであった犬星類の言葉で、自分自身を見つけていくことになる。
- 名前:犬星類(いぬぼしるい)
- 登場巻:第1巻~
- 立ち位置:本作のもう一人の主人公
【紹介】
神童と呼ばれている少年。
物事の全てを理論的に考えており、自分の考えを他人へ事細かに説明してしまう性格。そのことが原因でクラスから浮いた存在になっている。
ありすのことも最初はバカな人間と表現しているが、彼女がいつも他人と真剣に会話しようと試みていることには気づいている。
根はとても優しい性格で、ありすの真っすぐな気持ちを知り、彼女を応援したいと考えるようになる。
読んだ感想・レビュー
本作は、セミリンガルの少女、朝日田ありすが神童と呼ばれる犬星類と共に宇宙飛行士を目指す作品となっており、宇宙飛行士になっていることが前提でその過程を描いていく作風が特徴となっています。
前述していますが、ありすはセミリンガルであるが故に、自分の伝えたいことを表現することができず辛い日々を過ごしており、その辛いという気持ちすらも自分の中で言語化することができませんでした。
自分が何者かわからない、明日やることもわからない、ただ、つかれたとだけ表現しています。
”『つかれた。』しかわかんない。こういう時、なんて言うのかなぁ。これは・・・なんていう気持ちかなぁ”
と。
辛すぎます。。。
本来であれば、導いてくれる両親がいたはずですが、彼らはもうありすの傍にいません。彼女の言語化出来ない気持ちに気づいて助けてあげられる大人がいません。
こんなのどうしろっていうんだよ!って、筆者だったら自暴自棄になってしまいますよ!
しかし、そんな彼女の状態に気づいてくれる人間が現れます。
それが、クラスメイトの犬星類です。
独特な感性の持ち主で、クラスで少し浮いてしまっているけれど、それは逆に他人に流されることなく物事を客観的にみれる人間でもあったということなんですね。
ありすの状態に気づき彼女の気持ちを知った類が言った
”俺が君を賢くする”
という言葉から、ありすの全ては動き始めます!

両親が生前言っていた、人は天国に行った後に次に住む星を決めることができるという言葉を思い出したありすは、両親が住む星を目指すために宇宙飛行士になると決意するのです。
目指す理由が格好良すぎますよね。そして、明確な目標を決められたことに少しだけ羨ましさも感じてしまいます。
目標を決めたありすとそれを手助けする類の二人三脚での旅が始まるわけですが、ここから二人の怒涛の成長が始まっていくことになります。
類がありすに課した、宇宙飛行士になるために明日やることという宿題に対して、ありすは沢山の項目をあげていくのですが、本当に些細な事も含めて無数に書き出していきます。
”生まれて初めて、明日、やることがある”
そんな言葉と共に楽しそうに一つ一つ書き上げていくありすを見ていると心がとても嬉しい気持ちで満たされていくような感じがしました。
本当に些細なことだけど、ありすにとってはとても大切なもの、それが表現されていて、本当に凄いなという一言です。

ありすと類、この二人のやりとりを見ているだけでワクワクやドキドキが押し寄せてきて、二人の一挙手一投足から目が離せなくなります。
物事に対する考え方感じ方、どう捉えてどう表現して、活かしていくのか。二人の発想と行動がいつも予想外で読み進める手が止まりません。
二人の旅はまだ始まったばかりです。
これからどのような道を辿り、どのような素晴らしい世界を見せてくれるか一緒に見てみませんか?