
作者:つるまいかだ
ジャンル:スポーツ、ヒューマンドラマ、青春、友情、学生
掲載誌:月刊アフタヌーン
連載期間:2020年 5月~
刊行巻数:13巻(2025/07/02 現在)
あらすじ
アイスショーに出演するために、オーディションを受けては落選する日々を送っていた青年、明浦路 司(あけうらじ つかさ)は次のオーディションまでのつなぎの仕事の為、かつてアイスダンスのペアとして共に全日本選手権に出場した相手、高峰 瞳(たかみね ひとみ)がヘッドコーチを務める『ルクス東山FSC』を訪れる。
久しぶりに訪れたスケート場で自身のこれまでを振り返っていた彼の瞳の端に、一人の挙動不審な少女の姿が映る。不審に思った司は、少女へ声をかけるが。。。
挙動不審な少女との出会いの後、久しぶりに再会した瞳からルクス東山FSCでアシスタントコーチとして働かないかと打診を受けるが、自分には実績が無いという理由から彼女の申し出を断ろうとする。
そんな時、先日出会った少女が母親と共に、ルクス東山FSCを訪れる。
しかし、入会の為に訪れたかと思えばそうではなく、母親の口から告げられた言葉はあまりに残酷な一言だった。
この子には何もできない、先生の口からはっきり断られれば諦められるだろう、と。
少女の表情と過去の自分を重ね合わせる司は諦めるにせよ、一度滑ってみようと提案する。
傷つきながらも、掴んだチャンスを前に、彼女、結束 いのり(ゆいつか いのり)は圧倒的な滑りを披露する。
いのりの滑りと彼女がスケートに懸ける想いを知った司は過去の自分と姿が重なり、断ろうと考えていたコーチを引き受けることを決意する。
夢に破れ続けた青年と、夢を叶えるスタートラインに立とうと懸命に努力する少女の世界一を目指す旅が今始まる。
おすすめのポイントを三つ紹介!
- フィギュアスケート歴ゼロの少女と指導歴ゼロの青年、新米タッグが魅せる世界が凄い!
自身の過去の経歴から、指導者として誰かを導くことに抵抗を持っていた司。そして、自分に自信がなく、何をやっても人並み以下で他人からバカにされ続けた少女、いのり。
他の何もかも人並み以下で良い。でも、フィギュアスケートだけは誰よりも上手くありたいと叫ぶ小さな少女の願いを叶えるべく、手を取り合った二人が氷上の世界を駆け抜けていく様がまさに圧巻の一言です。 - 狼嵜 光 (かみさき ひかる)という絶対的な存在
本作は主人公のいのり、司の他にも、主人公と言っても差し支えないキャラクターが存在します。それが狼嵜 光 (かみさき ひかる)です。
いのりと同世代の選手で、その圧倒的な実力から彼女の目標となります。
作中では絶対的な強者として描かれていますが、その生い立ちや家族やコーチとの関係、そしていのりに対する気持ちが事細かに描写されているため、非常に重要なキャラクターとなります。
この二人のライバル関係が本当に激熱です!! - フィギュアスケートを知らない人でも解りやすく描かれている
本作のとても良いポイントとして、筆者のようなフィギュアスケートのルールや魅力を知らない人でも非常に解りやすく描かれている点です。
点数の付け方って審査員の気分じゃなかったの!?とか、ステップとかジャンプ、着地とそんなに細かい判定基準あったのか!と本当に驚きますよ。
どんな構成で進むのか、ステップは?ジャンプは何が高得点で、勝つためにはそれらをどう組み合わせるのか等々初心者でもわかるように登場人物たちが説明してくれます(助かる~(笑))
また、画力が素晴らしく、滑走している選手たちの表情や熱意、そして演技の臨場感が半端じゃないです。
どんな人におすすめ?
- 主人公たちの成長を見届けたい方
- 激熱のライバル関係を見届けたい方
- 自分の夢を追いかけたい方
イラスト!!
- 透明感がありつつも、気持ちが伝わってくる強さがある

- 登場人物たちの成長が緻密に表現されている

キャラクター紹介
- 名前:結束 いのり(ゆいつか いのり)
- 登場巻:第1巻~
- 立ち位置:本作の主人公
【紹介】
フィギュアスケートクラブ『ルクス東山FSC』に所属する小学五年生。
引っ込み思案な性格と、学校での成績があまり良くなく、周囲からの評価はあまり高くない。
ただ、フィギュアスケートに対する気持ちは誰にも負けたくないと思っており、司と出会うまでは独学で日々練習を重ねていた。
司がコーチになったのち、ひた向きな姿勢とたゆまぬ努力でその才能を一気に開花させることになる。
夢はオリンピック金メダリスト。
- 名前:明浦路 司(あけうらじ つかさ)
- 登場巻:第1巻~
- 立ち位置:いのりのコーチにして本作のもう一人の主人公
【紹介】
フィギュアスケートクラブ『ルクス東山FSC』にコーチとして所属する所属する26歳。
選手時代、本格的に師事を受けたのが20歳と異色の経歴を持つ。
その後、アイスダンスで全日本選手権に出場するまでの実力者となるが、本人は当時のパートナーであった高峰 瞳の実力だと思っている。
アイスダンス引退後はアイスショーに出演するためにオーディションを受けては落選する日々を送っている。
そんなある日、瞳からの誘いでコーチとしての道を模索することになるが、そこでいのりと出会う。
- 名前:狼嵜 光 (かみさき ひかる)
- 登場巻:第1巻~
- 立ち位置:いのりの目標
【紹介】
フィギュアスケートクラブ『名港ウィンドFSC』に所属するいのりと同い年の天才少女。
他の追随を許さない圧倒的な実力は生まれ持った天性の才能のみならず、他の何もかもを犠牲にしても良いという気持ちと練習量によるものである。
いのりに対しては当初、自分の滑りを目の当たりにしても、心が折れない強い子という印象だったが、他の子が持たないフィギュアスケートに対する執着と異常な成長スピードをみて自信を脅かす存在になると確信する。
- 名前:夜鷹 純(よだか じゅん)
- 登場巻:第1巻~
- 立ち位置:光のコーチ
【紹介】
訳あって、公にしていないが光のコーチを務める、元オリンピック金メダリスト。
現役時代はその魅惑的なかつダイナミックな演技で観客たちを魅了してきた天才スケーターで、選手としての活動を終えた今でもその実力は衰えていない。
自身がそうであったように、出場する大会すべてで優勝できなければ即コーチを降りるという条件のもと、光のコーチを務めている。
読んだ感想・レビュー
本作品は主人公である結束いのりと明浦路司の出会いから共に成長し、競争力が非常に高い日本フィギュアスケート界、更には世界へ飛び出していく姿を圧倒的な画力と構成で描いた傑作となっています。
自分に自信が持てず、学校では何もできない、同級生からも何もしないでと言われてしまう程に落ちこぼれてしまっていた少女、結束いのり。しかし彼女は、小さい頃に見たフィギュアスケートをする姉の姿に憧れて、自分もあんな風にキラキラした人間になりたい、フィギュアスケートだけは他の誰にも負けたくないと思えるほど強い芯を持った女の事なんですね。
そんな彼女ですが、そのことを口に出せず日々自主練習に明け暮れる中で出会ったのが明浦路司という青年でした。
夢を追いかけたい少女、夢に破れ目標を見失っていた青年、この二人の運命的な出会いからすべては始まっていきます。
ここからとんとん拍子に成長してライバルたちを次々と打ち負かしていく!ということは勿論ありませんが、成長や栄光、挫折、絶望と沢山のことを経験して支えあいながら、転びながらも前に進んでいく二人の姿に心躍る気持ちが抑えきれません。

また、本作は何と言っても『いのり×光』の関係性が非常に面白いです!
徐々に徐々に形を変えていくその関係性がまるで生き物のように時に魅力的で、時に恐ろしく、時に辛いといった様々な感情を読者に与えてくれます。
本当にこの関係性が描ける作者様凄すぎます。(毎度ブルってます(笑))

おすすめポイントで記述しておりますが、本作はフィギュアスケートについて何も知らない筆者でもドはまりする程に解りやすく丁寧に描かれていることに加え、登場人物たちのフィギュアスケートに対する思い、負けたくないという気持ちが一人ひとり非常に丁寧に描かれているため、ぜひぜひ読んで欲しい作品です!
巻を追うごとに加速していく展開と推しが絶対に出来てしまう程の魅力的な登場人物たちを応援してみてくださいね!