おすすめマンガ あらすじ紹介 人と妖怪が織りなす、美しくも切ない物語『私を喰べたい、ひとでなし』

画像は「私を喰べたい、ひとでなし」第1巻より 作者/苗川采

作者:苗川采
ジャンル:サスペンス、青春、学生、百合、妖怪
掲載誌:電撃マオウ
連載期間:2020年 8月27日~
刊行巻数:10巻(2025/08/25 現在)

あらすじ

海辺の町で独り暮らしをしている少女、八百歳比名子(やおとせひなこ)は、通学中に、海のような青色の瞳をした美しい少女、近江汐莉(おうみしおり)と出会う。
その日の帰り、教師から呼び出しを受けた親友の社美胡(やしろみこ)を待っていると、校外から不思議な気配を感じ、海の方に向かうことに。
そこにいたのは、これまで見たことのない異形の怪物で、比名子をいい匂いと語るそれは彼女を海に引きずり込んでいく。
自分が引きずり込まれる音と、徐々に暗くなっていく世界の中で、理不尽さを感じつつもその身を委ねていく比名子。
しかし次に目を開けた先に見たのは、異形の怪物でも、引きずり込まれた暗い海でもない、青く美しい海色の瞳を持った美しい少女だった。
怪物を一瞬で倒す姿も、返り血を浴びた状態で微笑む姿も、あまりにも現実世界から乖離しているはずなのに、恐怖してしまうはずなのに、比名子の心にあったのはある一つの思いだけで。
これは死にたがりの少女とその少女を喰べたい”ひとでなし”が綴る、美しくも切ない物語。

おすすめのポイントを三つ紹介!

  • 人間の少女と彼女を喰べたい妖怪が織りなす優しいテンポが心地よい
    主人公の比名子は、ある事件がきっかけで自身の心を閉ざしてしまっています。そんな彼女の前に汐莉が突然現れて、自分は人魚であり、君を喰べに来たのだと宣言します。
    しかし、汐莉曰く、人間には食べ頃があるとのことで普段は比名子に対してとても優しく接していきます。
    普通、喰べるために来たなんて言われたら逃げるとか警察に駆け込むとかすると思いますが(笑)比名子はある理由からそれをしません。
    それどころか彼女とのやりとりに少しだけ心地よさも感じるようになるのですが、凸凹コンビのやりとりのテンポが良くて読んでいて最高なんですよ。
  • ミステリアスで不思議なストーリー
    比名子を喰べると宣言しつつ、食べ頃になるためには比名子自身が幸せにならないといけないのだと告げる汐莉。
    比名子に寄って来る妖怪たちが揃って彼女を美味しそうと口にしている様子からこれって本当の事なのかな?もっと美味しくしたいだけ?と疑問に思いつつ、他に真意があるのではと考えてしまいます。
  • 残酷だけれど世界は美しいと語りかけてくるような絵が凄い
    本作、絵がめちゃくちゃ綺麗です!
    普通なら怖いと感じてしまうシーンでも、”美”が勝ってしまうくらいに美しいです。
    そして、そんな素晴らしい絵と構成を上手く組み合わせたシーンが良くて、例えば、比名子の心理状態を示す場面で、深海とそこを泳ぐ魚たちが描かれていたりと背筋がぞっとなるような感覚が伝わってきます。

どんな人におすすめ?

  • 新感覚ガール・ミーツ・ガール作品に触れたい人
  • 先が読めないワクワクしたストーリーを読みたい人
  • 素敵な絵で感動したい人

イラスト!!

  • 美術館に展示されていても不思議じゃない
画像は「私を喰べたい、ひとでなし」第1巻より 作者/苗川采
  • そっと吹く風と血まみれの手、非日常なのに美しさが最初に出てくる
画像は「私を喰べたい、ひとでなし」第1巻より 作者/苗川采

キャラクター紹介

  • 名前:八百歳 比名子(やおとせ ひなこ)
  • 登場巻:第1巻~
  • 立ち位置:本作の主人公

【紹介】
海辺の町で独り暮らす少女。
過去の事故の経験から生きることに対する執着心が希薄になっている。
突然現れて、自分を食べると宣言した汐莉に恐怖心ではなく、期待の気持ちを抱いている。
事故の後も変わらず自分に接してくれている親友の美胡を大切に思っている。

  • 名前:近江 汐莉(おうみ しおり)
  • 登場巻:第1巻~
  • 立ち位置:比名子を喰べたい人魚

【紹介】
比名子の前に突然現れた、海色の瞳をした美少女。
異形の怪物に比名子が襲われているところを助けるが、その理由は自分が彼女を食べるためだと宣言する。
自らも人魚の妖怪であることを比名子に告白しており、彼女が美味しくなるために、守りつつもいろいろな場へと連れ出している。

  • 名前:社 美胡(やしろ みこ)
  • 登場巻:第1巻~
  • 立ち位置:比名子の親友

【紹介】
比名子の事が大大大好きな親友。
とても明るく学校中の生徒から愛されるマスコットキャラ。
大好きな比名子の前に現れた汐莉を非常に警戒しており、比名子に近づけないよういろいろと画策している。

読んだ感想・レビュー

死にたがりの少女と、その少女を喰べたい人魚の妖怪ひとでなしが織りなす切ないけれど美しい物語、私を喰べたい、ひとでなし。

過去の事故がきっかけで生に対する執着心が人一倍希薄な少女、比名子とそんな比名子を喰べたいと告げる人魚の妖怪、汐莉が出会い、そして汐莉に手を引かれながら人間らしい幸せを掴むために歩み始めるところから物語は始まります。
全体的に少し落ち着いた雰囲気ですが、暗すぎるという印象は受けない作品です。
というのも、比名子の親友である美胡や喰べると宣言している汐莉の優しさが非常に温かいからです。
旧知の仲である美胡が比名子に優しくするのは不思議ではないのですが、出会ったばかりの汐莉が優しいのは、作中で本人からも語られている通り、比名子を美味しく食べるためだということ。
でも、これって本当なのかなって少し疑わしくて、食べようと思っている相手に、あなたの事を食べるから幸せになってね、なんてそもそも言う必要ないのでは?とかいろいろ考えてしまいます。
そして、第一話で彼女が口にする『ずっと君をさがしていた』という台詞から、以前から比名子を知っていたように感じられます。
汐莉の比名子に対する優しさは本当に”食”からくるものなのでしょうか。
何にせよ、汐莉の優しさの理由はこれから徐々に明かされていくのだと思いますがとても楽しみですね。

画像は「私を喰べたい、ひとでなし」第1巻より 作者/苗川采

本作品は比名子視点がメインで描かれており、彼女の心理描写が度々表現されているのですが、そのどれもが”海中”を軸に描かれています。
それは時に、真っ暗な深海へと沈んでいくものも表現されています。
それは比名子自身の終着点を表していて、今の彼女が辿り着きたいと切望している場所なんですよね。そのシーンと共に吐露する

『あんなにも輝いていたはずの夏が今はこんなにも苦しい』

と表現している通り、かつての幸せだった記憶すらも今の彼女を苦しめる原因になってしまっているような気がして本当に辛いです。
しかし、深海へ沈んでいく彼女をいつも必ず引き上げてくれる存在がいます。
それが、近江汐莉です。

無抵抗のまま、沈んでいく彼女の手を力強く握って、引っ張り上げてくれる彼女の姿をみると、本当に食べたいだけ?と疑問に思ってしまうのは私だけではないはず。
汐莉の比名子に対する優しさは、単なる獲物に向けるものではきっとないのだと思っています。
そう信じたいだけかもしれないですが(笑)
何度絶望したって、何度深海へ消えたいと願ったって、必ず引き上げてみせますよとそう言ってそうな汐莉の飄々とした表情が本当に頼もしくて最高なんですよ。

果たして比名子が自分の幸せを見つけて、生き続けたいと願う願う日は来るのか、その日が来た時に汐莉がとる行動とは何なのか、先が気になりまくりの『私を喰べたい、ひとでなし』から目が離せません。

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